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デジタル化とDXは全く別物と分かっていたつもりだったけど、DXって何と聞かれると答えられなかった。読み終わった後はそこに光を当ててくれたような気がした。
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この高度成長期を支えた発想、つまり「工場内ではヨコ割り、事業部門間・企業間ではタテ割りで経験を積み、熟練を磨きこむことが強い」「業種というタテ割りの中で戦う/政策を考えると勝てる」という、我が国官民に共通のふたつの発想を打ち砕いたのが、デジタル化である。政府もビジネスも、かつてはIT産業、いまでいうデジタル、スマートビジネスを上記の発想・ロジックの延長線上でイメージした。つまりは新しく「IT産「業」が既存の業界の外側にできたかのように考えて戦い、敗れた。それが我々の経験したことである。だからこそ、我々はいま新しいロジックを理解し身に刻まなければならないのである。
■上がってから、はじめて下がる――まずは抽象化、そののち具現化してみる
このビジコンとインテルとの出会いにはデジタル化の本質の全てがある、と私は考える。まずデジタル化のロジックとは「具体ではなく抽象」だということ、つまり「この手を打てばいま目の前にある具体的なもの以外のものも含めて、何でも処理・解決できてしまうのではないか」という発想である。1種類のものを、もし可能であれば1種類に落とし込めないか、そしてそのときに今は目の前にはない計算機、さらには他の電子機器のことも「探索」しイメージしようという発想である。
少し脱線するが一つの経験談をお話ししたい。私が東京電力の経営に参画していた時代、旧知のスイス企業を訪ねたことがある。ランディス・ギアといってスマートメーターでは世界のトップ企業であり、訪ねたのは社長のウンバッハ氏である。一時はシーメンスの傘下だったのだが、当時は東芝と産業革新機構が株式を保有していた。サイモン氏も実はドイツ中堅企業にスイスのドイツ語圏にある企業を含める場合が多いので、「隠れたチャンピオン」企業の一つと言ってもよいのだろう。しかし、ウンバッハ社長を訪問した理由は、スマートメーターの件ではない。世界の電力会社、ガス会社、水道会社と取引のあるランディス・ギアの社長から見て、電力会社の次の10年の課題は何であり、どんなエネルギー企業の動きに着目しているか、それが聞きたい点であった。ウンバッハ氏は、独自の資料に基づいて雄弁に説明してくれた。そしてその話は、世界的なコンサルティングファームなどから聞く話とはまた一味違う「芯を食った」話であった。これもまた、隠れたチャンピオン企業は、顧客の将来課題から発想しているということを示す忘れがたいエピソードである。
ミン・ゾンはアリババが担っているメカニズムは二つだという。一つがネットワークコーディネーションであり、いま一つはデータインテリジェンスである。それを中国的に「陰と陽」として表現している。ネットワークコーディネーションが陽、データインテリジェンスが陰である。ネットワークコーディネーションは、アリババが創業以来関わってきた、オンライン小売市場のタオバオに関係するプレイヤーの間のコーディネーションを指している。関係するプレイヤーは、売り手としての出店者、買い手である消費者、卸売、メーカー、決済事業、ソーシャルメディア、広告、そして出店者をサポートするサービスプロバイダーなどである。その間をデータでつないで最適になるよう調整することをネットワークコーディネーション、と言っている。
…デジタル化とは、最も単純なゼロイチの物理的な表現から、現実に存在する複雑な人間の実課題を解決することの間を共通のレイヤーをいくつも積み重ねることで連結しよう、というメカニズムである。
人間の実課題とコンピュータの物理的基盤がどんどんつながり始めている。それは、単なるゼロイチの計算の速さ故、半導体の能力故、そしてデータの量故ではない。アルファ碁の事例で説明したように、囲碁の盤面のパターンと勝ち筋の探索を純粋な計算能力だけで突破しようとすれば、超天文学的なことになる。もともとアルゴリズムとは(ディープラーニングまで持ち出さずとも)、できるだけ早く計算結果に到達できる手順のことを指している。ミン・ゾンがアルゴリズムで動いていない会社はスマートビジネスでないというのは、言い換えれば、会社自体が計算結果(データから価値を生むソリューション)に早く到達できるかたちになっているか、を問うているのである。その「早く到達できるかたち」を、アリババのようにかなり内製化しているか、あるいはクラウドサービスを利用して外部のものを大幅に利用するかは別として、どちらにしてもそれを実現しているのはレイヤー構造をしたソフトウェア群である。
そして、このレイヤー構造をしたソフトウェア群は、データを処理すればするほど、使えば使うほど精巧になるという進化を指向する存在でもある。
当時聞いた話で最も目から鱗であったことの一つは、製造業の仕組みは、とどのつまり二つのタイプに分類できる、ということである。一つが組み立て加工型、いま一つがダイセルを含むプロセス産業型である。この二つには大きな違いがある。
組み立て加工は、ラインを組んだ流れ作業であり、その間で部品・中間材の受け渡しが行われて最終製品に至る。換言すれば、人が工具などを使って働きかける作業を幾重にも繰り返して成り立っているということになる。トヨタのカイゼン方式が活かされるのはこうしたケースである。この方式では不具合があるとラインを止めることになるのだが、その不具合の原因となった人の行動を洗い出し改善することで、ラインを止める時間がどんどん短くなり、かつ流れ自体も速くなる。第2章で紹介した小池和男の分析対象となった日本の熟練の典型的なケースはこちらであろう。
プロセス産業はこれとは大きく異なる。これも単純化すれば、液体や気体が設備配管のなかを流れている工程だからだ。こちらの場合は、不具合があって設備の稼働を止めるというのは本当の最終手段であり、その時間の長短を梃子に生産性を改善するということはできない。稼働を停止しないために行われるのが、前述した安定化のための予兆監視と介入だということになる。
また、組み立て加工産業の仕組みを模式化すると、工場の入り口には多種多様な部品があり、出口には限られた数の完成品が並ぶというイメージになる。N(多数)から1を作るという考え方である。これに対して例えば化学産業の工場やサプライチェーン全体を見るとその逆になる。極端にいうと、入口には原油しかない。これ���対して出口でできる製品は多種多様である。1からNを作る作業だ、ということになる。
■アーキテクチャ理解の急所
データの場合/夜食のラーメンの場合
・アーキテクチャの目的
データを転換して価値、 ソリューションにする。
/食材に手を加えて美味しいラーメンにする。
・コンポーネントの役割
データを変換して、得たいデータの状態にすること。それで達成したい差分。
/食材に手を加えること。それで達成したい差分。麺を好みの硬さに茹でること。
・間違ったコンポーネント理解
ソースコード自体と同一視する。
/「100℃のお湯で3分間茹でること」と同一視する。
・レイヤー構造とは
データを転換するステップの積み重ね。
/食材に手を加えるステップの積み重ね。
・レイヤーとは
同じレベルのコンポーネントを並べたもの。
/同じ段階の手順(「麺を茹でる」「スープを温める」)を並べたもの。
・インターフェースとは
コンポーネントの中で行 われている処理を他のコ ンポーネント、上位のレイヤーから見て隠すこと。
/スープは「温めたもの」 は「茹でたもの」といちいち言わずに済ますこと
とは
・レイヤーを積み重ね、コンポーネントを増やすとできること
人間の実課題のソリューションの多くをデータから作ることができるようになる。新しい価値を持ったソリューションも生み出すことができる。
/ラーメンはもとより、世界中の料理が作れるようになる。新しい料理も生み出される。
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プログラミングや情報技術論ではなく、DX時代のマインドセットが分かりやすく整理されている。
ビジネスパーソンとして、読んで良かったと思える一冊。
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なぜ読んだ?
ひとことで言えば、就職活動においてDXを語るため。
数あるDX本からこの本を選んだのは、企業経営に関するDX推進を担当されていた社員の方が、参考になる本として挙げていたから。
学んだこと
デジタル化の本質は抽象化
感想
DXおよびデジタル化と言われている現象の本質を書こうと志向した本。抽象的かつ全体で通底しているメッセージが、手を替え品を替え繰り返される。比喩を多用している。
ときには比喩を使いすぎていて逆に分かりにくい部分もあった(例えば7章p180の、インタフェースをラーメン作りの比喩で説明する箇所)。そのため、素直にコンピュータ科学のワードで説明してほしいと感じた。しかしそう感じるのは、私が工学系の大学院生であるためかもしれない。
p234
「学問の世界において生じている対象の捉え直し」を通して考えたこと
私の専門の脳神経科学で言うと自由エネルギー原理だろうか。
脳科学における
①抽象⇄具体思考
②パターン思考(アナロジーで分野を横断)
は何だろうか。
・脳のネットワークをグラフ理論で扱う。細胞同士のネットワークも、脳部位同士のネットワークも。
・脳の活動ひいては人間の活動を関数として捉える。input->process->output
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2冊同時投稿「DXの思考法」「アフターデジタル」
必ずしもテーマが綺麗に重なっているわけではないが、私の中で一つのトピックなのでお許し頂きたい。
で、まあデジタルトランスフォーメーションであるが、平たく言うとなんなのか。
前者「DX」はその構造的理解を、後者「アフター」はその先端的実装事例を解説してくれる。
「DX」の肝は、データは階層構造で把握すべき、というもの(本書の例えでいうなら、ミルフィーユ)。「アフター」の肝は、もうリアルの世界でデジタルをどう使うかの時代ではない、両者に境はなくユーザーはそれを意識していない、企業に求められるのは最適なジャーニーの提供だというもの。
前者は概念中心で使用実例はコマツやダイセルなどごく一部。後者はデータの構造よりは、そこにある何かしらのデータを分析することでユーザーはここまで満足感を味わってくれる、という事例がエキサイティング。一方、そもそもデータとは、という抽象論には立ち入らない。
どちらが良いということはないが、私個人の関心には「アフター」がよりフィットした。
ちなみにどちらもデータ分析そのものの指南書ではない。これを読んでも、自社の基幹システムに吐き出させた生データを前にして勝手に手が動き出すということはない。
何が起きているのかをコンセプチュアルに把握できれば、あとはデータサイエンティストなどプロフェッショナルや人工知能を有効活用すれば良い、という割り切りだろう。
うむ。
その通りだろうが、なにかものすごくわかった気はするが、畳の上の水練でシステム予算を溶かしてしまったらどうしよう、そんな不安に駆られる経営層もいるのではないだろうか。
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いや面白かった、すごかった、文句なしの★5つです。
昨年に読んでいたのですが、読書レビューもしたく再読したのですが、よかったです。すごく理解が深まりました。実際に自分で何か行動に移せる(アウトプット出来る)かは不明ですが、読み終えての達成感がありました。 あとは、この本が読めるまでにいろいろと個人的に勉強してきてよかったな、いきなりこの本を読むのは相当難しいんだろうな、とも感じたのが印象です。
私が営業で担当している企業様より「この本を軸に考えたい」と紹介をいただいたことがきっかけで読んだ本なのですが、改めてこの本に出会えてよかったと思いました。紹介してくださったご担当者様に感謝です。 しかしながら前述しましたが、この本を読んで手触り感を得られるには、相応の事前知識が必要なんだろうなと感じました。この本を読む前に自分が読んできてよかったと思う本は以下の通りです。
-東大准教授に教わる『人工知能って、そんなことまでできるんですか?』
-人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの
-両利きの経営
-世界標準の経営理論
-シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成
-コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える
-アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る
-アフターデジタル2 UXと自由
上記をひととおりこれまで読んできた上で、今回の本を読ませていただいたので、(あとは実際自分がもともと計算機を扱ってきていたり、ディープラーニングを勉強してきていたり、DXを提案してきたりしてきた背景も当然あるのですが)、コンピュータがゼロイチで認識する層から人間の課題に直接接する層まで、というレイヤー構造の概念などは比較的理解ができました。読み終えて改めて表紙の写真を撮ろうと帯を眺めた際にウエディングケーキらしき概念物を表現しているところもなかなか味があるなと思いました。
解説でも冨山 和彦さんがおっしゃってましたが、わかりにくい概念を、極力わかりやすいメタファーとして表現していて読者への理解を進めようとしているところはよく伝わりました。
「天才西山圭太が、彼の数歩後からついてくる私たちにも分かるように親切に、しかも議論の質を落とさずに仕上げてくれたことに敬意を表するとともに、著述家としての彼の新たな才能を見たように思う。」
私も理解力が乏しいので完全に人に教えられるレベルまで至ったかというと疑問なのですが、「天才」に咀嚼していただいた内容を少しは吸収できたのではと感じています。 具体と抽象の行き来の表現や、AIにおける多層構造のディープラーニングの話・パターン認識の話、と読み進めてきたところでの『カレー粉』のメタファーは最も腹落ちしました。 ソフトウェアとか仮想化とかの話で「隠蔽する」とか「ラッピングする」とかの表現が用いられますが、『カレー粉』は、めっちゃありがたかったです。
読む前に一通り事前知識があったほうがより理解が深まる本ではございますが、非��に勉強になる本なので、ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。
ふせんはいろいろ打ったのですが三点のみ引用抜粋します。
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P39 日本の弱み、日本のカイシャのロジックとデジタル化のロジックがずれてしまっていること、を理解するために重要なのは次の点である。 つまり、「単純な仕掛けをつくると、目の前にないものも含めて何でもできてしまうかもしれない」という一般化・抽象化の思想が、デジタル化の根底に常にある、ということである。そして、そのことがもつ破壊的ともいえるパワーがデジタル化を貫いていて、現代にいたるまで、そして今後ますますそれが影響すを広げつつあるという点である。
P42 デジタル化のロジックとは「具体でなく抽象」だということ、つまり「この手を打てば目の前にある具体的なもの以外のものも含めて、何でも処理・解決できてしまうのではないか」という発想である。
P229
DXのスタートラインは、自社のシステム構成を理解することではなく、まず本屋の本棚の前に立って、その本棚を見渡して、それで自社のビジネスをどう組み立てるかを考えることであるべきだ。自社のシステム構成や業務フローの最適化から発想すると、自社の置かれた競争環境=白地図を見失うことになる。
P269 解説(冨山 和彦)より
もし、本書を読んでデジタル化の本質的な意味合い、そしてIXの衝撃の実相を理解できない、実感できない、さらには(危機感であれ、わくわく感であり)マインドリセットをできないとすれば、今後、ビジネスの最前線で闘い続けるのは難しいかもしれない。
この本に書いてあることが響くか⁉ そして心は奮い立ったか⁉ 本書は著者と私からすべてのビジネスパーソンへ、IX時代の生き残りと飛躍的成長をかけた応援的挑戦状なのだ。
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以上
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著者が言うように、本書は「DXについて書かれた多くの本のアプローチとは発想が異なっている」。つまり自社の業務プロセスやシステムを省みてデジタル化や最適化をタテ割りで考えるのではなく、どのようなCXを顧客に提供したいのか、それは社内外のリソースを使って実現できるか、そこで足りないものを自社開発・カスタマイズできるかという、他社・他産業の成果物も視野に入れたヨコ割りで考えることを勧めている。
理解促進のためのtips:
・実は、本書より西山圭太氏自身が別途書いたメルマガを読むほうが手っ取り早くかつわかりやすい。
https://www.hitac.hitachi.co.jp/_ct/17522918
・いざ本書を読むときは冨田和彦氏の解説から読み始めると事態の呑み込みが速くなる。
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DXについて深く広く知りたくて、
色々と調べる中で、本書にたどり着きました。
第一章を読み進めていくうちに、
ドンドン引き込まれていきました。
一旦、通読後、巻末にある
冨山氏の解説を読んでから、
気になるところを、再読すると、
さらに理解が深まりました。
この本に限らず、難解な内容は、
複数回、読み込むことにより、
著者の考えや思いを汲み取ることができます。
ネットフリックスやダイセルに関する内容は、
事実によるもののため、説得力がありました。
ダイセルについては、もう少し詳しく記載があれば、
さらによいと思いました。
ネットフリックスは、
この手の話題で、よく聞く企業なので、
とても優れた企業だと感じました。
あとは、実践で試していこうと思います。
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仕事でDX、DXと叫ばれる割にその意味をあまり理解できていなかったので手に取った。
DXはレイヤー構造をしており、ゼロイチで表現される物理層とその上に積まれるレイヤー、そして1番上に人間の実課題が来る。この実課題の解決のために、レイヤーを抽象化したものを組み合わせて新たな価値を生む。
後半はなかなか理解が難しい内容も続くが、自分なりにDX、IXの理解は進んだと思う。
本棚にすでにある本は借りてきて、まだないものを作る。そしてそれらを組み合わせる。
果たして自分にそこまでのことが出来るのか、それはこれからやってみないとわからない。少なくとも、著者らの危機感、期待感は受け取った。また読み返しながら理解を深めていきたい。
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Netflixの”No rule”としながらいかに会社の方向性を発散させることなく、成功してきたか、事例として勉強になった。コンテキストの説明、共有が重要。
DXよりIX。デジタル化⇔経営、具体⇔抽象の間を往復することが重要。
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「著者は、時代の数歩先を行く天才だ」と扉に書いてあるが、本書を読み終わった後にそれを見ると猛烈な肩透かし感。松尾豊氏推薦!って書いてあるから期待したのだけど……。
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DXの企業活用という枠を超え、一般的な企業がイメージするDX化を著者の豊富な経験と知識を基に再構築し、定義付けてくれる一冊。
難しい話が多いが、わかりやすい例を挟んでくれており途中で挫折なく読了。
「抽象化」「レイヤー」「アーキテクチャ」という仕事にも活かせる考察があり、視座が上がった気がした。