投稿元:
レビューを見る
実際に東日本大震災を経験していたら感想が出るのかもしれない。わたしじゃ想像力が追いつかなかった、暗い感じがする作品でした。
大切にすべきものは仕事じゃない、というメッセージがあったように思いました。
投稿元:
レビューを見る
「象の皮膚」でも感じたけれど、主人公の心情が淡々と綴られていく様や明確な最後や劇的な展開はないのだけれど、辛い現状も過去もすべて引っ提げたそのまま続いていくという現実がしみじみと突き刺さる。
投稿元:
レビューを見る
逢隈、鳥の海、仙台、なじみのある土地、震災を経験した身として、あの日を思い出さずにはいられない。震災風化
への抵抗。確かに、来月で12年になるが、深い悲しみを背負って生きていかなければならない人は数えきれない。ノンフィクションとも思える心の葛藤や情景。海の様子、死者への報い、つらい言葉ばかりが連なる。震災を忘れないような手段は写真ばかりではない。
投稿元:
レビューを見る
大切な人を失った後も生きていくことのせつなさを感じる。震災が奪ったものは人だけでなく住む場所、景色などいろいろあるのだろう。実際に体験した人ならではの表現だと思った。
投稿元:
レビューを見る
2011年3月、未曾有の大災害が東北を襲った。
その襲ったものは、人間の記憶に深く鋭利に入り込んでいき、世界を震撼させた。
本作は、震災で何かを失った人たちの深く鬱蒼とした気持ちを問い続ける作品です。
著者の佐藤さんは、仙台出身で、現在も仙台に暮らし、仙台で書店員をしながら、執筆活動をされている。自分の故郷の暗いイメージを作品にするのは、中々勇気のいることだと思うし、難しいと思うし、どう作品として、表現するのか。
でも、負のイメージだけでは無くて、次に再生することも表現さてれいて、希望の作品なんじゃないかと感じました。
この作品が芥川賞を受賞して、とても良かったと個人的には感じました。(偉そうですいません)
投稿元:
レビューを見る
祐治にしろ、明夫にしろ、辛い!!どんな呪縛だ。生きる事は苦行なのか。只々、靄をかきわけるように読了。
投稿元:
レビューを見る
3.11災厄の「それから」を描いた作品。
日常の至るところであの日失くしたものを想起し、その疼きと向き合いながら生きていくことのむごさ。
希望、平静、そして安らぎ。
本当の意味で当事者にそれらが訪れることはないのかもしれない。
けれど生きるってそういうことだ。
投稿元:
レビューを見る
大きな事件があったりする訳ではないけれど、災厄があっても生きている人は進んでいくしかないことを作者は伝えたいのだと思った。
投稿元:
レビューを見る
手元から離れて気づく感情と、取り戻すことは出来ないとわかりながらも思い耽る姿、目を背けるための日常が表現されていた。
全体を通して陰翳のある、暗い雰囲気が漂っているが、時折日常に垣間見える色鮮やかな描写が美しいと感じた。
投稿元:
レビューを見る
第168回芥川賞受賞作。東日本大震災の被災地で、荒んだ暮らしをする男。いくらもがいても前に進めないもどかしさを、時折、脳裏に浮かぶ「海の膨張」と称する津波のシーンを取り入れながら描く。 主人公・坂井祐治は独立して造園業を営み始めた直後に災厄に見舞われる。2年後、妻の晴海がインフルエンザで他界、6年後に知加子と再婚するも、流産をきっかけに一方的に離婚されてしまう。母親の和子と息子・啓太との3人暮らしだが、亡くなった晴海の思い出や知加子への割りきれない思い、啓太にうまく付き合ってやれない後ろ暗さから、苦悩の毎日を送っている。
一方、彼と小中学校で同年だった近所の明夫は、妻と娘を津波で失い、癌の転移で余生幾ばくもない。もともと、酒癖が悪く、仕事も長続きせず、荒れた暮らしをしている。
2人を中心に、全体的に重苦しく暗いトーンで物語が進むが、根底には、新しく防潮堤ができても、海と人が分断され、元の生活がもどらない被災地への著者の思いがある。
主人公が造園に携わる場面のリアルな描写や、現在の被災地の様子を繊細に心に響くように伝える表現力は、さすがの力量を感じた。
投稿元:
レビューを見る
芥川賞作品は各時代の空気を敏感に反映しているが、
これはどうなんだろう?
震災を経験した人には共感しやすいかもしれないが、一般的な辛い出来事として共感を得られるのだろうか。
神戸や新潟や熊本の地震や北海道の津波、自然災害だけでなく誰にでも訪れる身の回りの不幸。それらの苦悩からなおも一生懸命生きていくという1つのカタチ。
すずめの戸締りも同じテーマだが、すずめの方は未来へ向かって明るく希望を持って締めくくられる。
荒地の家族はそれは容易ではなさそうだ。
ケラケラ笑う息子が印象的な結び方だった。
受け取り方は読者それぞれ。世代が変わるまで背負い続けるのか。
地元の人には風景が目に浮かぶが、知らない人は想像力が鍛えられるであろう。
派手な震災か、ひっそりと人知れずニュースにもならない不幸か、そのどちらがより不幸で悲しい経験なのか?当事者にとっては同じ悲しみだろう。
震災を特別視しすぎると、震災を経験した自分を不幸だと思い込みすぎると、本当の不幸な人生になるよ。だから「震災」という言葉を避けた。他の不幸と同じなんだ、という意識が作者にはあるのではないか。
政府からの予算もほとんど無くなり、震災後10年以上過ぎた現代の空気を読む良い切り口だろう。
投稿元:
レビューを見る
情景描写が鮮やかで、そして震災当時と今を見つめさせてくれる良い小説だった。震災が変えてしまったものは元には戻らない。それを受け入れた上で、前に進んでいかなければいけない苦悩が伝わってくる。
一気に読了したが、ずしっと重たい感情が押し寄せてきた。読みやすく一気に読み進めてしまったが、なかなかに体力を使っていたのだなと…。
投稿元:
レビューを見る
東日本大震災を契機とした人の生活を描いたと評であったので、本文からそれを探したが、立ち読みでは探せなかった。著者が仙台の書店の店員ということでも話題になっていた。手に取ると意外と厚い本で驚いたが、紙が厚いだけであった。
投稿元:
レビューを見る
硬質でしっかりした文章でとても心地よく読めました。
作業着でタオルを頭に巻いた状態で着飾る百貨店に押し掛けるなど無計画な主人公と、解説風な情景表現が矛盾なく読み進められました。エンタメ寄りの作品だと、出てくる人が妙に全員賢かったり、着眼点が極端過ぎることが多いと思いますが、この作品は純文学らしい構成がすごく良かったです。本人の思いというより周辺の景色の見え方が、つまり深層の思いを表している感覚で、主人公と共に厄災から狂い始めた人生を感じ入ることができました。
家族と共にただ生きていくということがこれほどにも難しいのだろうか思わされ、そして、どこまでが震災のせいでどこまでが自分のせいなのか、という葛藤が存在することに気付かされました。
震災後10年経過して当然なことかもしれません。
投稿元:
レビューを見る
東北での震災被害を受けた主人公の生活を描いた点に関心があり、本作を手に取りましたが想像以上に薄暗くどんよりした雰囲気で、お話としては重く感じました。特に震災を思い起こすような描写は情景が浮かび上がってくるようで、すごくリアルに感じました。
このお話を通して、震災被害の規模は建物や道路等の施設の損壊に留まらず、被害者の精神面にも影響を与えていることを改めて実感しました。
そして、辛いことが起きた時、時間が解決してくれることもあると思いますが、時には辛い思いを一緒に共有したり、逃げずに正面きって対処することの重要性も実感できたと思います。