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都会から田舎に引っ越してきた少年。彼は地元の学校の悪友らと一緒に万引きしたり危険な遊びに興じる。
美しい自然描写の一方、物語全体にかかる不気味さがあり、終盤でそれは先輩の熾烈ないじめと、いじめられっ子から少年へ執拗な追跡という形で明示される。
後味は悪い。
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表題作「送り火」は、第159回芥川賞を受賞した著者の代表作です。父の転勤が多く引っ越しを繰り返していた歩は、その土地に順応するのが早かった。次の引越し先が、東北のある山の麓にある町で、歩は中学生最後をその町で過ごすことになった。そこで出会ったのが、学校のガキ大将的ポジションの晃だった。彼との出会いが、歩の人生を変えていく。クライマックスの部分がすごく印象的でした。
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高橋弘希著『送り火 (文春文庫 ; た104-1)』(文藝春秋)
2020.8発行
2020.8.17読了
人間が暴力に快楽を覚えるのは、悪に憧れる心理と似ている。フロイト流に言えば欲動である。この欲動というものは、普段は社会的規範や言語規制あるいは自我によって抑圧されている。
ところで、本作の舞台はとある没落氏族の血筋を持つ集落である。この集落には欲動を放出させる社会的装置がほとんど存在しない。したがって、暴力は集落全体に雑草のように蔓延る。暴力は世代間連鎖を経て次第に亢進していく。この小説は早春から始まり、稲作の一連の工程とパラレルに語られていく。収穫を目前に稔った稲穂には、いくら農薬が改良されても必ず生育不良の白穂が混じるという。暴力は暴力を生み、再生産されていく。この悪しき因習はソトの人間によってこそ絶たれるべきだった。しかし、歩にはそれが出来なかった。舟子になれず、川底から、燃え上がる藁人形を傍観することしか出来なかった。見事な写生文によって描かれた本作は、そのまま読者も射程に捉える。何もしなかった歩の視点は小説の外側に位置する読者の精神を無言のうちに代弁しているからだ。それで豊かな沈黙が今日まで伝統を守り続けている理由がほぼ分かった。
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