転校生のまなざし
2023/09/17 00:05
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
「送り火」というタイトルから、もっと人の生死や祭祀に関する内容なのかと思ったら、いい意味で裏切られた。
東北の片田舎に転校した主人公。転校を繰り返しているだけに、すぐに慣れる。空気を読んで、なじむのもお手のものといったところ。しかし娯楽の限られた土地で、鬱屈したエネルギーを持て余した少年たちは、この田舎の伝承として、危険な暴力を玩具としている。うまく距離を取りながら、客観的に振る舞っているつもりの主人公は・・・。
読んでいるときは田舎の風習含め、訳分からなかったが、一つ一つの行為がディテールに富み、妙に現実味がある。最後まで読んで、あ、なるほど、と気づかせる。主人公は冷静で客観的だ。どこか突き放したように、この土地を、友人たちを見ている。
どうせまたすぐにここを離れる、という気持ち(非当事者感)ゆえだろう。
都会からやってきてまたすぐにいなくなるであろう転校生が、東北の田舎の自然やそこにずっと生きる/そこから逃れられない人々に感じる親しみや、向けるまなざし…。
その態度は、ある種の暴力なのかもしれないのだ。
芥川賞も納得の作品だが、個人的には「指の骨」のほうが好きだ。
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【理不尽な暴力を描く芥川賞受賞作が待望の文庫化】東京から山間の町へ引っ越した少年が暴力の果てに見たものは? 圧倒的破壊力をもつ芥川賞受賞作のほか、単行本未収録の2篇を収録。
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芥川賞作品という点と著者まの経歴に親近感を覚え、手に取った。都会から田舎の環境に変わった中学生の心情が描かれた話。不安定な情緒が日に日に危険性を増し、遂には〜・・ラストは目を背けながら、死と紙一重な思春期の心境を感じさせられた。
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バイオレンス描写が、生ぬるい。
というのも、殊にこの手の描写に関してなら村上龍とか花村萬月とか、究め尽くした作家が山のようにいるので、はっきり言って分が悪いだろう。
もちろん、語彙の豊富さや描写の厚みは最近の作家では群を抜いているのは確かだ。本作にもそれは発揮できている。それだけに惜しいと思う。まだ、これ、という主題を高橋は見つけていないのではないか。
個人的には『日曜日の人々』のようなものを再度書いてほしいな、とは思っている。
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無知な子供たちの悪戯という印象で始まるが後半は痛々しく生々しいが惹きつけられてしまった。
実際中学生ぐらいまでは学校と家が世界の全てになってしまっているので恐怖を感じた。更に田舎という場所がより狭さを感じる。
そんな狭い世界で生きる学生は地元や集団の中でひとつでも選択を誤ると取り返しのつかない事になるという自らの学生時代を思い出した。
そんな感想とは別に、晃や稔の心情をもっと深く読み取りたいと思った。
一度読んだだけの自分は終盤の心情がよく分からなかった。
晃の時折見せる正義感や真面目さは?
稔は歩が自分より弱そうで器用だからムカついたのか?
登場人物の背景も少ないので細部までは分からなかった。
しかし恵比寿顔と鬼の二つの顔をもつお面のように薄ら笑いを浮かべている稔の本心は鬼の様になっていた事は分かった。
知らない地元ルールに巻き込まれる怖さはエグい。
湯治という作品が非常に好みだった。古傷を治す為、民宿で湯治しに行く話だが過去の悲しみは古傷と同じで、いつまで経っても治らない。意外と人間は繊細で脆いのだと気付かせてくれる。
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読書開始日:2021年6月23日
読書終了日:2021年7月1日
所感
学生の頃の、悪いとは思うが周りに流されてやってしまう感じ。自分にも覚えがある。
そんな時は決まって文章中の一文「その冷たい響きに反して、胸中には甘い微熱を覚えた」の感覚を味わっていた。
田舎の年功序列、悪のサイクル、刺激が少ないが故の渇望、よくない部分が全て写ってた。
恐らく稔は、東京からやってきた主人公の中途半端な優しさがムカついたのだと思う。余ったコーラを情けでやるなんて最たるもの。
全ての行動に弱者を庇う自分が色濃く残っていた。
そしてポッと出が晃の右腕ポジションになり自分の罰を見物しているとなれば相当心にくる。
こういった本人らがいじめと認識しないようないじりに関しては関係性が大事だ。
最後の灯籠流しの部分や藁人形の部分など解釈できないものが多かった。
途中から難易度が増した作品
風が咲いた
学級会の成功はね、僕の出番がないことだからね
水のような汗が頬を伝う
ハジの赤味ではなく。鬱血による紅色が顔面に広がる
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閉じられたコミュニティでの虐め、暴力
傍観者としてのいじめ
最後はハラハラするし文章力がすごかった
2021/7/18 ☆3.7
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第159回芥川賞受賞作。
中学3年生の歩。
中学生というだけで危うさがありそうだが、
景色も、友達との関係も、全てのところにどこか後ろ暗い感じを醸造させている。
なんでもできそうで、なにもできないような年頃の、
なにも起きなさそうで、なにか起きてしまう、そんなお話。
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後味がスッキリしないそして子供の世界の話だが考えさせられる作品。
一度だけでは理解できなかったので、しばらくしてから2回目を読もうと思う。
読めない漢字が多かったので勉強になった。
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話の展開の速さについていけない、、。
途中までは表現の美しさ、描写の的確さに魅せられたが、ラストで置いていかれる。
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数年ぶりの再読ですが
あらためて目眩が。
言葉選びや構成が巧み
なことこのうえなく、
といって技巧に溺れて
内容が薄っぺらという
こともなく。
このボリュームでこれ
だけ人間の闇を抉って
くるとは・・・
曖昧模糊とした扉絵も
読み終えてから見直す
としっかり怖くなる。
小説として、また本と
して完成度高し。
でもこれまったく人に
お薦めできないです。
あまりに凄惨な暴行が
繰り広げられてもはや
トラウマレベル。
三途の川や彼岸の景色
を生きながら見てきた
ような読後感です(泣
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収録されている短編のうち「あなたのなかの忘れた海」が好きなバンドの曲のタイトルだったので気になって購入した。表題の「送り火」のラストが衝撃で今もよく分かってない……。田舎の穏やかな空気の中にずっと緊張感が漂ってて怖かった。そういう不気味な空気感の描写がすごかった。
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第159回芥川賞受賞作。
「あなたのなかの忘れた海」、「湯治」の三作。
表題作は、終わり方も含めて、受賞作っぽいなと感じた。比較的鮮明にイメージできる文章に思われた。その他の2作品は、同じようにイメージはつながりやすかったのだが、内容はなんとなく、日常の断片が切り取られただけの感じがした。もっと長い作品が読んでみたい。
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津軽地方の片田舎,転校した歩は息詰まる暴力に巻き込まれる.いじめを超えた快楽のための暴力ははけ口のない社会の澱なのだろうか.