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夢の始まりとデザインの具現化
本書は、「ななつ星in九州」が国際的なアワードで1位を獲得したことから始まり、その成功の軌跡を辿ります。著者の壮大な構想は、九州新幹線全線開業を機に、九州内を巡る豪華寝台列車として具体化されていきました。当初は懐疑的な意見もあったものの、デザイナー水戸岡鋭治氏の即座の賛同を得てプロジェクトは始動。韓国やタイ、スペインの豪華列車の視察を通して得たインスピレーションが、独自のデザインへと昇華していきました。
伝統と革新が融合した車両
水戸岡氏の「昔の人は皆デザインしていた」という信念のもと、ななつ星のデザインはモダンからクラシック基調へと転換。有田焼の洗面鉢を十四代柿右衛門に依頼するなど、伝統工芸を取り入れながらも、水戸岡氏流のおしゃれでモダンな要素も融合されています。伊勢神宮や奈良の視察では、雰囲気や物語自体が観光資源になるという気づきを得て、列車内での体験に活かされています。
「氣」が宿る車両製造と運行体制
「世界一」を目指し、熱意と熱量がぶつかり合って生まれたななつ星には「氣」が満ち溢れています。車両製造現場での職人たちの奮闘や、運行体制に関する徹底的な議論を経て、独自の運行ダイヤや選りすぐりの運転士による安全運行体制が確立されました。沿線地域住民の温かい歓迎も、ななつ星ブランドを磨き上げる大きな力となっています。
「お客様は家族」究極のおもてなし
ななつ星のクルーは、乗客が乗車から降車までを同じ車両で過ごし、名旅館の仲居や一流ホテルのバトラーのような役割を担います。「お客様の家族の一員」という理念のもと、マニュアルを超えた全人格的なおもてなしを提供。由布院などの名旅館での実地研修を通して、細やかな「氣」遣いを学び、初回運行では沿線住民の熱烈な歓迎を受けました。
妥協なき品質を支えるプロ意識
車両の清掃と点検は、専門家による徹底した作業が行われ、細部にまで「魂が宿る」という精神がチームに浸透。食事も旅の重要な要素であり、「やま中」の大将の哲学、長崎や由布院の有名シェフによる創意工夫を凝らした料理が提供されます。「二つ星も三つ星も要らない。ななつ星ですから」という職人の誇りが、妥協なき品質を支えています。
独自の販売戦略と地域ブランディング
ブランド価値を高めるため、予約はコネやツテを一切排除した厳正な抽選制を採用。これはスペインの予約困難なレストラン「エル・ブジ」から学んだ哲学です。由布院や黒川温泉の地域ブランディング成功事例を参考に、質の高いコンテンツと共感を呼ぶストーリーによって、ななつ星のブランド価値は高められています。
「秘すれば花」広報戦略と「氣」の力
運行開始前の深夜試運転や、出発時の厳戒態勢など、あえて情報を制限する「秘すれば花」戦略が成功を収めました。運行中止の際にも、お客様への「おもてなし」の精神を貫き、安全と品質を最優先する判断が下されました。ななつ星には、関係者たちの強い思いと手間が凝縮された「氣」が溢れており、それが多くの人々の心を捉え、感動を呼ぶ源泉となっているのです。
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ななつ星in九州を始めたJR九州の元社長の回顧録
文章からもアツい想いが伝わってくる
この本を読むと、非常に高価で予約も取りにくいが、一度ななつ星に乗ってみたくなると思う
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豪華寝台列車
提案選択型サービス
非マニュアル化サービス
フレキシブルなサービス
心と五感のサービス
クラシック基調のインテリア 豪華と贅沢とは それまでの経験から
柿右衛門の洗面鉢
神社参道論 参道の長さが感動の大きさに 世阿弥の序・破・急
窓が額縁 30億円強で8両編成 新幹線並み
ななつ星 九州7県 7つの車両
3泊4日で125万円~ 春秋2回 ネットのみの申し込み ツテとコネ排除
電車ではなくディーゼルエンジンの機関車 ローカル線や単線も走れる
一日目のランチ「やま中」握りたての寿司
1泊2日 ディナー「ホテルニュー長崎」川崎シェフ
3泊4日 ディナー 大分「方寸」創作料理
スイーツ、コース料理 フレンチ 六本木「エディション・コウジ・シモムラ」
フレンチ 由布院「ラ・ヴェルヴェンヌ」
2013年10月15日~23年12月末 817本 1万9465名 リピート11.7% 倍率13.9倍
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「人がつくり出す手間暇こそが、人間が感動する最も大切な要素」
言うは易いが、社長として会社の経営も見ながら、新規事業であるななつ星にこのポリシーを通せたのは、この方の戦略性が高かったからこそ。
社内の「誰」にどんな「場」で咲いてもらうのかの采配も見事だったと思う。
「コミュニケーションは大なり小なりエネルギーの交換」
との一文もあったが、ご自身も細やかに、時には戦略的にコミュニケーションをとられて熱を伝えていかれたのだと思う。
ななつ星の本のように見えて、新規事業を成功させるための経営の真髄とは?を考えさせられる1冊。
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★ゼロから作ったすごさとビジネスとしての価値のバランス★九州新幹線の開業を前に、豪華寝台列車という次の夢を社内に打ち出した構想力。サービスの経験がないなか、各方面のプロと連携し海外の高級列車を視察して実現にこぎつけた組織運営力と実行力。完全に独立した部署を作るとともに、運行のためには各部門も巻き込む仕組みづくりも上手かったのだろう。ずっと値上げを続けられたのが成功の証ではある。
一方で気になるのはビジネス面での評価だ。8両に新幹線並みの30億円をかけた。儲かっているのかという点は常に触れらず、JR九州のブランド価値を高めた、採用の後押しとなった、という視点でまとめられてしまう。値上げはできているが乗客数が限られるだけに、続けられる担保を知りたい。